Dragon Fang

倉庫の出口に歩きながらあたしは思う。

これで最後かもしれないな。

結局、あたしは良壱にとって最愛ではなかった。

…それが悔しくてたまらない。

あたしにとっては、良壱が最愛だったのに。

良壱が居れば、映画なんて行かなくても普通の恋人同士みたいに外でいちゃつくのもしなくて良いのに。

『その程度』だった。

倉庫を出た。

「……る!!」

微かに夏弥の怒鳴り声が聞こえる。

そんなのお構いなしに、倉庫を離れた。

今はダメ。

倉庫に居れば、沢山の人を見れば。

心の内に住む黒い獣が、彼等を襲う気がしたから。





< 89 / 200 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop