追憶のマリア
彼女は
42歳という若さで病死した。
そして俺は、こうして未だに健在で、現在も犯罪組織に潜伏中。
毎年彼女の命日に、俺は彼女に会いに行く。
一度そこで彼女の息子達と鉢合わせした。
兄の方は、俺が悠斗の父親だとすぐに気付き、親愛の情を浮かべて軽く会釈してくれた。
悠斗の方は、兄が会釈した知らない男を不思議そうに見ていた。
俺は彼らが持って来た花束の隣に、自分が持ってきた花束を置き、彼らと一緒に祈った。
「おじさん誰?」
祈りを捧げた後、悠斗が我慢できずに聞いてきた。
兄は、コラ、失礼だろと、悠斗を肘で軽くつついた。
「おじさんな、君達の両親にずっと前にお世話になったんだ。」
俺がそう言っても、悠斗は訳が分からずキョトンとしていた。
俺は少し考えて、
「こう言えばわかるかな…君達の両親は、おじさんの命の恩人なんだ。」
まだあどけなさの残る少年は、いまいちピンとこないようで、ふ~んともはやどうでもよさそうに言い、クルリと兄の方を向き、『帰ろ!!』と言った。
去ってゆく彼らを見送って、俺も待たせてあった黒塗りのセダンの後部座席に乗り込んだ。