追憶のマリア
れんはベッドの上に脱ぎ捨ててあった、自分の上の服を手に取り、それを着ながら寝室を出て玄関に向かった。
窪田はそれを追うように、れんの後に付いていき、
「二度とここに近付くな。また俺の許可なく勝手に上がり込んだら、今度こそ殺してやる。」
と怒鳴り散らした。
「あんなマグロ、こっちがお断りなんだよ!」
そう捨て台詞を吐いてれんは出て行った。
れんが出たのを見届けると、窪田はすぐさま寝室に戻った。
でもそこに母の姿はなかった。
束の間、窪田は寝室の入り口でポカンと立ち尽くしたが、浴室からシャワーの音が聞こえるのに気付き、急いで浴室へ行きドアを開けた。
浴室でシャワーから放出される湯を頭から浴びながら、母が手に持った何かで、しきりに身体をこすっていた。
よく見ると母は全身擦り傷だらけで、血が滲んではシャワーに流され、滲んではシャワーに流されを繰り返していた。
母が手に持って自分の身体をこすっていたものは、金ダワシだった。
窪田はそれに気付くと、慌てて母からそれを取り上げた。
母は尋常でないくらい取り乱し、窪田からそれを取り返そうとして、窪田に飛び掛った。
窪田は金ダワシを高く掲げ、母が届かないようにした。
母は取り戻せないと知ると、
「返してよ!この汚い身体洗うんだから…返して!」
と泣きながら叫んだ。
「あなたが言ったのよ…息子の為に生きろって…息子の為に身体売ってでも生き延びろって…」
泣きじゃくる母に、容赦なくシャワーの湯は降り注いだ。
「生き延びたって…こんな汚い身体で生き延びたって…どんな顔してあの子に会えばいいのよ?!何であの時殺してくれなかったのよ。」
泣きじゃくって、狂ったように叫ぶ母を、窪田は黙ってただ見詰めていた。
そして母の言葉が途切れると、少しの沈黙のあと、窪田は静かに呟いた。
「あんたは…汚くなんかない。とても綺麗だ。綺麗過ぎて…この手で触れるのをためらうほど…」
窪田はそれを追うように、れんの後に付いていき、
「二度とここに近付くな。また俺の許可なく勝手に上がり込んだら、今度こそ殺してやる。」
と怒鳴り散らした。
「あんなマグロ、こっちがお断りなんだよ!」
そう捨て台詞を吐いてれんは出て行った。
れんが出たのを見届けると、窪田はすぐさま寝室に戻った。
でもそこに母の姿はなかった。
束の間、窪田は寝室の入り口でポカンと立ち尽くしたが、浴室からシャワーの音が聞こえるのに気付き、急いで浴室へ行きドアを開けた。
浴室でシャワーから放出される湯を頭から浴びながら、母が手に持った何かで、しきりに身体をこすっていた。
よく見ると母は全身擦り傷だらけで、血が滲んではシャワーに流され、滲んではシャワーに流されを繰り返していた。
母が手に持って自分の身体をこすっていたものは、金ダワシだった。
窪田はそれに気付くと、慌てて母からそれを取り上げた。
母は尋常でないくらい取り乱し、窪田からそれを取り返そうとして、窪田に飛び掛った。
窪田は金ダワシを高く掲げ、母が届かないようにした。
母は取り戻せないと知ると、
「返してよ!この汚い身体洗うんだから…返して!」
と泣きながら叫んだ。
「あなたが言ったのよ…息子の為に生きろって…息子の為に身体売ってでも生き延びろって…」
泣きじゃくる母に、容赦なくシャワーの湯は降り注いだ。
「生き延びたって…こんな汚い身体で生き延びたって…どんな顔してあの子に会えばいいのよ?!何であの時殺してくれなかったのよ。」
泣きじゃくって、狂ったように叫ぶ母を、窪田は黙ってただ見詰めていた。
そして母の言葉が途切れると、少しの沈黙のあと、窪田は静かに呟いた。
「あんたは…汚くなんかない。とても綺麗だ。綺麗過ぎて…この手で触れるのをためらうほど…」