追憶のマリア
「もしあんたが、本当に死を望むなら…俺がこの手であんたの命を奪ってやる。けど息子は?あんたは息子から母親まで奪うのか?息子にとってあんたは…死んでも死ななくても永遠に綺麗なままだ。そして俺にとっても…。息子の為に生きろ。どんなに苦しくても生きてくれ。」


 切なげな窪田の表情に…優しく輝く漆黒の瞳に…母の怒りや悲しみ、苦しみや憎しみさえ吸い込まれてゆく…


 母は言葉を失い呆然と窪田を見詰めた。


 時が止まったように二人は黙って向き合い、その場に微動だにせず立ち尽くしていた。


 母の身体に絶えず降り注ぐシャワーに、母の涙はかき消された。


「触れて…」


 母が口を開いた。


「その手で触れて…その手で触れて、私が汚くないって証明して!」


 窪田は一瞬目を見開いて母を見た。


 でも次の瞬間、窪田は母の顔を両手で挟み、母の唇に自分の唇を強く押し付けていた。


 服を着たままの窪田にもシャワーは容赦なく降り注ぎ、窪田の服を瞬時にぐっしょり濡らした。


 窪田はそんなこと気に留めることなく、何度も激しく母の唇をむさぼった。


 母もそれに応えるように窪田を求めた。


 それから窪田は、母を抱き上げ寝室へ連れて行き、お互い濡れたままベッドの上で1つになった。


 窪田は何度も体位を変え、優しく母を貫いた。


 最後は母が窪田の下で、窪田の顔を両手で優しく包み、


「わたし…もう…」


 荒い息づかいの中でそう言って、恍惚の表情を見せた。


 窪田はそんな母を見て


「キレイだ…」


 そう言って、そっと母の唇に自分の唇を落とし、そして母の中で果てた。


 果てた後も、窪田はしばらく母の中にいた。


 そして離れることを惜しむように何度も何度も母に口づけし、顔を離して母にほんの一瞬優しい視線を注いでから、母の右肩の上にドサッと顔を落としてベッドに埋めた。








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