追憶のマリア





 彼女とはアパートの一室で共に生活していても、お互い一切関わることなく過ごした。


 けど大怪我して帰った俺を、看護師の彼女が手当てし、救ってくれた。


 それをきっかけに、俺達は2・3、言葉を交わした。







 俺は彼女が無邪気に笑うことを知った。







 そんな、ほんの小さな幸せに俺は癒された。


 彼女と少し距離を置いて、そっと見守ることで、ささやかな生きがいを見出した。


 けどそのせいで、俺の緊張がほんの少し緩んでしまっていたのかもしれない。


 俺は取り返しのつかないヘマをした。


 れんが俺の隙をつき、彼女を犯した。


 俺はれんへの怒りと憎しみで正気を失いかけた。


 れんを殺したかった。


 この手で…


 激しく湧き上がるれんへの殺意と俺は必死に戦い、なんとか自分を制御した。







 そして…







 自暴自棄になってしまった彼女を、俺は抱いた。









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