追憶のマリア
「冗談だろ?お前のその顔だったら、極上の女とやりたい放題だろーが?!もっと親に感謝しろ!!」


 青山さんは懲りずにまた俺の顔を茶化した。


 そうゆうこと言われるから嫌なんだ。


 青山さんは俺のそうゆう気持ち分かってて、わざと言うから余計に腹が立つ。


 俺は反撃に出た。


「青山さんだって、若い頃は髪フサフサで、ジャニ系だったそうじゃないですか。」


「髪のことは言うな。」


 悔しそうな声が後部から返ってきた。






 こんなくだらない話でも俺の精神状態は少し正常に傾く。


 青山さんは俺のセラピスト役もこなしている。


 俺は心がほんの少し和んだところで本題に入った。


「れんをパクって全部吐かせる。」


「まだだ。」


 青山さんが有無を言わさぬ勢いで強く制止した。


「タイからブツが入るのはいつだ?」


 青山さんは、れんが4日後に計画している、でかい麻薬取引のことを言っている。


 それをわかってて俺は、さあね、と白々しくとぼけた。


「窪田…れんが近々取引する相手は、タイの巨大な麻薬密造組織で、日本に出回ってるヤクの4割がそこで作られたものと言われている…」


「売るほうも悪いが、買うほうも悪いさ。買うヤツがいなきゃ売れない…だろ?!」


「そんなモラルが通用しない世界だってことは、お前の方が俺よりずっとよく知ってるはずだ。」



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