追憶のマリア
 今更俺の正体がバレようが、どうでも良かった。


 俺は事が終わるのを、このままジッと待つつもりだった。


 れん…なんなら、俺の命を奪ってから行けばいい…


 お前は刑務所へ…


 俺は地獄へ…








 だけどれんは、まだ俺にとんでもないサプライズを用意していた。


「じゃじゃ~~~~ん。」


 とおどけたように言い、大きな給水タンクの陰から、一人の女を引きずるように連れ出した。


 彼女だった。


 俺のマリア…


 後ろ手に手錠をかけられ、口にガムテープを貼られて、彼女は潤んだ瞳で真っ直ぐに俺を見た。


「彼女はおいていけ。もう必要ないだろ?」


 俺がれんを刺激しないよう、静かに、諭すように訴えると、


「お前はほんと油断できないからなぁ…。この女には一緒に来てもらう。」


 そう言って彼女の口に貼られたガムテープと、手の手錠を外し、彼女に銃口を向けた。


「逃げると撃つからね。」


 れんは彼女に優しく囁いた。








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