追憶のマリア
 俺は彼女を見た。


 彼女の澄んだ瞳が真っ直ぐ俺を見詰めた。


 そしてゆっくり目を閉じ、彼女の方からもつかんでいた俺の腕から、そっと手を離した。








 あんたはどうして…


 最期の時まで


 こんなにも美しくいられるのか…








「よせ。」


 れんに向かって、俺は静かに言った。










 俺は…

 片方の手を離した。








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