追憶のマリア
彼女は今頃、最愛の息子と涙の再会を果たし、やっと取り戻した幸せに浸っているだろうか…
翌日、『ツヨシ』が生活していたアパートの現場検証に立ち会いながら、俺はそんなことを考えていた。
寝室から出てきた捜査官が、
「これ、何ですかね?」
と、1枚のA5サイズのメモ用紙のようなものを俺に差し出した。
俺は差し出された紙を受け取り、それを眺めた。
その紙には『正』という字がいくつか書かれていて、一番下に書かれた『正』は途中書きだった。
何かを数え、それを覚え書きしたものらしかった。
俺は最後の日、彼女がベッドサイドの引き出しに、慌てて何かを隠したのを思い出した。
これを隠したのか…。
あんな必死になって隠すようなものか?
それにしても、彼女はいったい何を数えていたんだろうか…