魔女っ娘アン魔は師匠の弟子
どこからともなく聞こえて来るホウホウというフクロウの鳴き声が微かに響く静寂な山の夜
二人の魔法使いの会話は淡々と続く。
「一人前の魔女、か。
何年先になる事やらなぁ」
「ホントですよねぇ。
でもあたし早くいっぱい魔法使えるようになりたいなぁ
炎とか出せたらカッコイイだろうなぁ
ゴゴゴォォ〜っ、て」
目の前で逞しく燃える炎をものうげな眼差しで見つめるアン魔。
パチパチと燃える焚火の炎は知らん顔で2つの影をただゆらゆらと揺らす。
「あれ?お前火炎系の魔法使えるだろ。
だってほら、前になんか指から小っこい炎出してカラス追っ払ってた事あったじゃねぇか」
「違いますよっ、あんなんじゃなくってもっと大っきい奴っ。この焚火なんかよりもっともっと大っきい炎っ」
「それじゃお前の身体よりデカイじゃねぇか。
そんなイカツイ魔法使ったら一発でぶっ倒れるぞ?」
「いえいえ、何も今すぐに、って言ってるワケじゃないですよ。
たくさん修業して、高度な魔法ガンガン使えるようになったらの話しですってば」
「……ふうん。
おれは炎なんか別にカッコイイとは思わんけどね。
まぁ人それぞれって奴だな」
「あたし、子供の頃絵本で見た事あるんです。
それ魔法使いの話しだったんですケド、
主人公が体中から炎を放つシーンがあったんですよ。
その場面が凄くカッコよくって、あたしそのページばっかり何回も見返したりして」
「ほうほう」
「それであたしもいつか
こんな凄い魔法使えるようになれたらいいなぁ、って幼心に夢見てたりして…
まぁ絵本の中の話しなんであれなんですケドねぇ」
「なるほどねぇ。
体中から炎を放つ魔法か…そりゃ俗に言う
『レッド・ドレス』、
てヤツだな」
「えっ…!?
あ、あれってホントにあるんですか!?
架空の話しじゃなくって!?」
「あぁ、普通にあるよ。
てゆーか、そこそこ火炎系に長けてる奴だったら大体使えんじゃねぇか?」
「そ、そうなんですかぁっ、じゃああたしもいっぱい修業頑張ればいずれは…!」