文章のおべんきょう
前のページはプロローグでして、あんな
感じで3ページ続いたあと本編に入り
ますが、

実はそこでは一転して、少年と少女が
追われて隠れているシーン、つまり
「緊迫感」を読者に感じさせるシーン
から始まります。


「リンダ! ねえ、リンダ!」
澄んだ高い声が呼んだ。いちおう、かれ
としては、声をひそめてささやきかけた
つもりだったのだ。

しかし、少年の声は思いのほかに、静ま
り返った森の木々のあいだに高く響き
わたった。

「しっ! バカね、おまえは」
少女が鋭くとがめた。レムスは頬をふく
らせて静かになった。だがまだリンダは
満足しなかった。

「まったく、お前ったら考えなしなんだ
 からーーここがどこだか忘れたの?
 ルードの森よ、まだゴーラの冷酷王の
 領土なのよ」


・・以上に見るように、まずは「叫ぶ
少年」のセリフで「何か逼迫したことが
起こっている」と読者に思わせるのですが、

同時にその少年の声は「澄んだ高い声」
であること、彼らの周囲が森であること
など

「キャラの特徴と周りの状況」を
伝えることにも成功しています。

そしてそれに対する少女のセリフは、
彼女と彼の「関係性」(上下関係)や、
彼女の性格を「説明することなく表現」
していますね。これが「描写」でしょう
か。リンダ、レムスと、彼らの名前も
さっそく書いています。

しかし・・栗本大先生には悪いんですが、
その次のリンダのセリフはいただけない、
と僕は思う。ここはルードの森で、ゴー
ラの冷酷王の領土だというのですが、

どうだろう。かなり「説明くさい」感じ
がしませんか? たしかにそれで読者に
また「新たな情報」が伝わったのですが
・・ちょっと説明しすぎな気もしまし
たね。

そのセリフって、誰に言ってるの?
レムス少年に? それとも僕に?と
いう(笑)

この「出だし」が教えるのは
1)やっぱり出だしは「疾走感」「緊迫
  感」を与えて読者に続きを読む気に
  させろ
2)キャラの特徴や性格と、周囲の状況
  は早めに書け。
3)キャラの名前は、何らかの効果を
  狙っているのでないのなら、早めに
  出せ。

というあたりでしょうか。




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