文章のおべんきょう
周囲の洋風な新しい家々とは違って、
にな川の家は平屋の古い造りだった。

鉄の門の向こうにはぬれぬれとした石畳
が続いており、玄関の戸は引き戸で
小さい。

にな川が押すと、門は細長く甲高い音を
立てて軋んだ。

表札に彫られた「にな」の漢字は、私の
知らない、虫偏の難しい漢字で、なんと
なくかたつむりを連想させる字だ。



・・これは、主人公の初美がオタクのクラ
スメート・にな川の家に初めてやってくる
シーン。

読むと、ここは「ビデオカメラ」のよう
ですね。まずは「周囲の家々と、にな川の
家の対比」から始まります。

周囲の家々は洋風な新しい感じですが、
にな川の家は古い平屋なわけです。
初美の目がビデオカメラとなって、映る
全体をとらえているのですな。

次に、「鉄の門」に目線が行きます。
続いて、その向こうの「石畳」が見える
わけですが、ここで「ぬれぬれとした石畳」
と表現しているのが上手い!

ちょっと不気味なクラスメートのにな川を
イメージさせるようでもあり・・または
それは僕の考えすぎだとしても(笑)

ただの石畳よりは「ぬれぬれとした石畳」
の方がやっぱり良いですよ、文章としては。

石畳の向こうは玄関で、引き戸。ここで
主人公の「視覚」はいったん終わって、
次は「聴覚」。

にな川が押すと、門は「甲高い音をたてて
きしんだ」わけですね~。家の古さを表現
してもおり、

やっぱりアイドルオタクのにな川の不気味さ
も表していますよね。

そしてまた視覚ですが、表札に「にな」の
字が漢字で書かれているのを主人公は見ます。

そうです、にな川は有名な演出家の蜷川幸雄
と同じく「蜷川」なので、それを「かたつ
むりを連想させる」と主人公(以後「初美」)
は思ったのですが、

実はこの小説の中で、「蜷川」は一度も
「蜷」の字が出てこずに、「にな川」と表記
されます。

これも独特な効果をもっていますね。
この作者は10代にして「イメージ」を操る
テクニックを身につけていると見えます。







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