文章のおべんきょう
昔の家だからか、天井が低く、全体的に
こぢんまりしている。

玄関の正面にある襖(ふすま)は閉じら
れていて、にな川はその襖の脇にある
磨りガラスの敷居戸を開けた。

薄暗い板張りの細長い廊下が長く続いて
いて、靴下を通して、板廊下の冷たさが
足の裏に染みてくる。

今が初夏だということを忘れさせてくれ
る家だ。


・・にな川少年と初美が家に上がると、
天井が低く、こぢんまりしている。
これも「主人公の目がビデオカメラ的に
見ている実感」ですね。

玄関の正面に襖があり(と初美の目に
映り)、(その目の前で)にな川が襖の
脇の磨りガラスの敷居戸を開けると・・

「薄暗い」板張りの細長い廊下が長く
続いているのが初美の目に映ったの
ですが、そこを歩いていると、
「板廊下の冷たさが足裏に染みて」
きます。

ハイ、ここは重要ポイントですよ!
ここは「皮膚感覚」の描写なのです。
(視覚や聴覚でなく)

冷たさの体感を書いているのですが、
板廊下による足裏の冷たさはたいていの
読者にかつて経験があることですから、

それを書くことによって、読者と主人公
の「シンクロ率」が知らないうちに
一瞬上がるのであります。

今が初夏だということを忘れさせて
くれる家だ、といいながら、逆に読者に
「作中の季節が初夏だと思い出させる」
ことも忘れません。こ、これも上手いな。

あと、「襖」とか「磨りガラスの敷居戸」
とか「板廊下」とか、いかにも「日本
家屋」のような用語をちりばめることで、
雰囲気を出してますね。

な、なんでそんなにテクニックあんの?
この19歳!(当時)


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