SでもMでも
賭け
「信じられない・・」
 

 何かの間違いとしか思えない。
 こんな事がありえるのだろうか。
 
 いや、あってたまるか!


 動揺する美央を横に、
 伸はにっこりとほほ笑んだ。
 

 「でも、さっき見たよね」
 
 まるで嫌がらせのように、伸は掌の紙を
 ひらひらと振り続ける。
 
 
 「・・それ、イラつくんだけど」
 やめてよね、と言おうとして
 美央は言葉を飲み込んだ。
 
 
 伸が、近づいてきたからである。

 「ちょ、ちょ、ちょっと」
 
 暑くもないのに、いやな汗が
 じわ、じわとにじむ。
 
 怖い。


 「賭け、したよね」

 気がつくと後ろは壁で、逃げ場がない。
 動機が激しい。怖い。
 
 怖い・・
 
 
 「本気なの?」
 
 目の前に居る伸は、いつもの伸じゃない
 気がする。
 
 いたたまれない。
 逃げ出したい。







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