SでもMでも


 喜んではしゃぐ太郎をなだめても、
 無情にも彼のテンションは上がる
 一方である。
 

 「もういい、走ろう」
 
 半ばヤケになり、太郎を制し裏口
 まで全速力で走る美央だったが、
 その必死な姿を、追いかけっこだと
 太郎が勘違いしてしまい、後ろから
 とびかかられてしまった。


 幸いにも前から転ばずには済んだ
 が、制服の後ろはくっきり肉球型の
 泥が付いている。


 なんで、朝からこんな・・

 泣きたくなってくる。
 

 
 その時、背後から悪魔の声が聞こえた。
 


 「何やってんの」
 
 伸だ。
 

 
 後ろに全神経があるんじゃないかと
 思うぐらい、意識が集中する。
 
 でも後ろが見れない。
 
 
 見ることができない、というのが
 正解かもしれない。

 
 「みーちゃん、制服に」
 泥が、と伸が言葉を発したと同時に、
 美央は全速力で走った。
 
 泥がついていようとなんだろうと、今
 はそんな事問題ではない。


 逃げなければ。
 逃げなければつかまる。
 

 息をするのも忘れたかのように、ひた
 すら走る。


 寝不足の上、朝食もとらずに走ったので
 気分は最悪だ。

 
 やっとの思いで教室に着くと、ひどい
 有様の美央に気付いた久美が駆け寄っ
 てきた。

 「どしたの!?襲われたの?後ろきった
  ないけど、気づいてる?」
  
 
 
 
 
 

< 11 / 18 >

この作品をシェア

pagetop