SでもMでも


 「分かってるよ」
 
 頭がくらくらする。
 美央は座席に着くなり、突っ伏した。


 「ちょっと、大丈夫?何があっても
  自分を作ってるあんたがさぁ。
  死人みたいだよ?」
 

 心配そうに久美が覗きこむ。


 「もうちょっと言いようがある
  でしょ・・」
 
 久美は美央の本来の性格を知ってい
 る、数少ない人間だ。

 人間を信用していない美央にとって、
 唯一の友人だと言える。

 
 「言いようも何もさ、もう今さらね」
 ガハハと豪快に笑いながら、カバン
 から下敷きを取り出す。
 
 仰いでくれるのかと思ったら、あちい、
 と言いながら久美は自分自身に風を送
 っていた。
 

 
 「久美、あたし、駄目だわ」
 
 「何が」

 「立てない」
 
 
 エエッ!?
 
 という、久美の間抜けな声を遠くに
 感じながら、美央は生まれて初めて
 意識を失った。


 
 目が覚めるとそこは、保健室だった。
 見慣れない天井に一瞬驚いたが、すぐに
 我に返った。
 
 「あー・・、もう・・」
 こんなの、いつもの私じゃない。
 逃げたりビクビクしたり、気絶したり・・


 口惜しい。

 無意識の内に、唇を噛みすぎてしまい
 血が滲む。
 
 
 時計を見ると、後20分程で5時間目が終わ
 る時間だった。
 朝からずっと寝ていたのだ。
 
 校医に挨拶をしようとベッドから出ると
 テーブルに置手紙があった。
 
 
< 12 / 18 >

この作品をシェア

pagetop