SでもMでも
 
 
 
 校医の足音がどんどん近づいて
 くる。


 このままだと最悪な事になるのは
 間違いない。


 「ま・・待つから!約束するから!
  だからもう止めてよ!」
 
 美央はとうとうギブアップした。


 口惜しいが、こんなとんでもない姿
 を誰かに見られるくらいなら、ここ
 で負けを認めたほうが良い。


 伸は、焦りで青くなっている美央を
 楽しそうに見つめた。
 
 「血が出てる。駄目だよ噛んだり
  しちゃ」
 

 まるで当然かのように美央の唇を
 ぺろりと舐める。


 「!!なっ!なに、何を!」
 
 驚きのあまり大声で叫びそうになる
 美央を制し、伸はひらりとベッド
 から降りた。

 
 「15時半ごろ来るから」


 校医が戸を開けるのとほぼ同時に、
 伸は窓から校庭へと出て行った。

 明るく手を振る伸を見送りながら、
 美央は呆然とした。

 
 なんなの、あれは。
 
 
 今までパシリ、いや、弟同然だと
 思っていた伸が。

 もう違う。
 あれは――――
 

 「敵だ」
 
 
 逃げなければつかまる。
 
 囚われる。



 怖い――――

 

 おさまらない動悸に戸惑いながら、
 美央は再び意識を失ったのであった。
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