SでもMでも


 大丈夫って・・何が?
 
 深く追求するべきか、迷ってしまう。

 
 ほっとしたような、物足りないような
 複雑な思いだ。
 だが、何を言われても満足はしなかった
 かもしれない。

 面倒くせーなあ・・

 伸とは小学生の頃からの付き合いで、
 一番仲の良い親友だ。
 が、やっぱりよく分からない。
 
 何か考えがあるのだろうか?
 いや、それとも何も考えていないとか?
 
 
 ぐるぐると考えている正貴の横で、
 再び伸がゲームをやりだした。
 
 
 マイペースな奴だよな・・
 
 
 考えてもよく分からなくないので、正貴は
 考えることを放棄し、放っておいた
 牛乳パックを手に取った。
 
 「捨ててくるわ」

 ごみ箱は部屋にあるのだが、その場を
 離れたかった。
 急ぎすぎて階段を踏み外しそうになって
 しまい、正貴は大きくため息をついた。

 

 恋とか愛とかのモンダイは、他人が
 口出しすることではない。

 分かってはいるのだが―・・

 
 少し寂しく思い、ふとジーンズのポケットの
 中の携帯を見ると、千代美から
 メールが届いていた。

 きっと明日の約束の件だ。

 「やべぇ・・忘れてた」

 他人のコトより、自分のコトをまず
 頑張らなくては。
 
 なんといっても、千代美は正貴の
 初めての彼女なのだ。
 そして、明日はめでたい初デート
 なのである。
 
 急に気持が焦ってきて、ダイニングに
 あった情報誌を必死に探すと
 良さそうなデート特集の記事があった。
 
 「映画の後、公園もいいかもな」

 ブツブツ言いながら夢中になって
 読みふけっていると、置時計がピッ!と
 音を鳴らした。
 
 
 16時か。
 
 気がつくと、部屋を出てから30分以上も
 経過していた。

 お詫びのつもりでお茶と菓子を
 用意し、静かに階段を上がっていくと、
 部屋からボソボソと声が聞こえてきた。
 
 女の声?

 姉貴か・・?



 
 

 








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