恋雫
声のする方向を振り向くと、
総悟が怪しい笑みを浮かべていた。
「朝っぱらから何!」
「朝っぱらから、ニヤニヤして変なこと考えてる女を見つけたから、ちょっとからかってみただけ」
「変なことなんて考えてない!!」
プイッと、また前を向いて歩調を速めて歩く。
さっきまでの幸せな時間はどこへやら、
今は、眉間にシワを寄せて不機嫌状態。
「なぁに怒ってんだよ」
私の一歩後ろを歩く総悟。
「怒ってない」
「じゃあ、そのおでこの皺はなんですかぁ?まさか、もうそんなシワが出来るほど、歳とっちゃいましたかぁ?」
徴発させるような口調で、
総悟は口を開く。
もう、一発ぶん殴ってもいいですか…?
「ぶん殴っても、無駄だと思うけど」
…完全に、心を読まれた。
ていうか、私より総悟のほうが1枚上手だ。
「俺、意外とモテるし顔に傷でも作ったら、オメェ、ただじゃすまねェよ」
「…ったく、もうなに!アンタはなにがしたいわけ!!」
歩くのを辞めて、後ろにいる総悟に怒鳴った。
いい加減、我慢の限界。
こんなに言いたい放題言われちゃ、
さすがに耐えきれなかった。