恋雫
職員室に入り、
先生の堅苦しい説明を耳に入れずに、
私はその時を待った。
「――……ということです。いいですか?」
「はい。よろしくおねがいします」
終夜が頭を下げたのを見て、私も頭を下げる。
先生は、にっこり微笑む。
「雫さんの教室は、1-1です」
「はい」
「黒崎 終夜さんは、1-1の担任です」
「はい」
終夜が私の手を握ると、
「行くぞ」と呟く。
私の気持ち、わかってないくせに、
普通に手なんて、握んないでよ。
ドキドキと、鳴りやんでくれない想いは、
私にとって…重荷だった。
終夜はモテるし、
私みたいな惨めな奴なんかと全然違う。
私の過去にどんなことがあっても、
私なんかと一緒にいてくれる終夜は、
優しすぎて、格差が出来てしまう。
私なんかと、終夜は…全然違う。
だから、この想いは…しまって置かなくちゃいけないんだ。