恋雫




いつまで経っても、手を髪から離してくれないその子。


「……なぁ…名前、ドロップでいい?」

「なんでよ」

「…なんとなく」

「雫とか、相川って呼ばないの?」

「俺は、ドロップのほうがいいの」




変な奴。

雫って名前なのに、なんでドロップ?

新種のニックネームの付け方?

ちょっと疑問に思いながら、前を向いた。


でも、やっぱり髪を離してくれない。



私の腰辺りまである長い髪の毛を、いじって遊んでいる。

三つ編みにしたり、ポニーテールにしてみたり…。




「…あの、女子の髪ずっと触ってる男子って…どうかと思うけど…?」

「…?…そうか?…こんなに楽しいのに」



た、楽しい?



「雫ちゃん、無理だって。コイツ、Sだから人が困ってんの見ると楽しくなるんだよ」



隣の席の子が、笑いながら言ってきた。




「そ、そうなんだ」

「でも、そこに人気があるんだけどね」



人気者…ですか。


私と総悟の出会いは、不思議な形であった。

それは、葉から落ちている最中の水の雫のように、曖昧な形で…。

< 7 / 20 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop