ラブ☆シェア
温まった身体が、だんだんと冷えていくのがわかる…
部屋に戻る気になれなくて、
ロビーの端の方のソファーで、じっと座っていた
「せっかく温泉に入ったのに冷えてしまいますよ」
座る私の横から
ブランケットが差し出された
見上げれば
色白で
パッチリとした瞳
ピンクの口紅がよく似合って
アップにした髪が
ほんのりとした色気を漂わせてて
全身を見れば
薄いグリーン色の生地に梅と鶯が描かれた
ステキな着物を着た女性がいた。
「あ、ありがとうございます」
ブランケットを受け取り
膝に掛けた。
「あ、あの、女将さんですか?」
さりげなく去ろうとするその人に問いかけた
「ええ、まだ修行中の身ですが」
ニコリと笑顔を向けて答えた。
「あの、ご挨拶もせずにすみません。
私、美耶子にこちらをお願いした榊原です
この度はお世話になります」
溢れそうだった涙を
グッと奥にしまいこんで
彼女に挨拶した
「まぁ!美耶子の!
こちらこそ、美耶子がお世話になってます
彼女と私は従姉同士でね
小さな頃はよく遊んだんですよ
しばらく彼女に合ってませんが元気ですか?」
「はい、とても元気にしてますよ」
温かい表情と
物腰の柔らかさが
凍りそうだった私の心を
少し溶かしてくれた。
「実っ!」
後方から
私を呼ぶ声に振り返ってみると
息を切らした彼が
近づいてきた。
「それじゃぁ、失礼しますね」
会釈をして
女将さんが去って行った。