雨に流れる
昨夜は閉店までクラブで大騒ぎしていたことははっきりと覚えている。

一緒に行っていたサトシが、かわいい女の子を捕まえてどこかへ消えてしまったので、仕方なく一人で帰るためにタクシーを待っていた時のこと。

そうだ、タクシーで帰ろうとしていたときにこいつに声をかけられたんだ。

俺もそれなりに酔っていたけど、まっすぐに歩けないくらいに酔っていた女。

化粧をしているけど、スッピンだとすごく幼い感じなんだろうな。

実際、こんな露出の激しい服装じゃなければこんな時間まで遊び歩いていたら補導されてもおかしくないだろう。

「ねえ、タケシ、水」

「…起きたのか?」

やっと捕まえたタクシーに、半ば押し込まれるようにして一緒に乗り込んできた女。

今まで女の子をお持ち帰りしたことなんてない俺は、こういうときにどうしたらいいのかわからないけど。

眠いし疲れたし、早く家に帰りたかった俺は、ちょっと顔が好みなのをいいことにそのまま家へと連れ帰ってしまった。

あわよくば…なんて下心もあったけど、ぐっすり眠った彼女を連れてアパートの階段を昇るのはいくら彼女が小柄でも酔っぱらった俺には辛くて。

何とか部屋に着いて彼女をベッドに転がしたところで、意識を手放してしまった。
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