雨に流れる
「天気予報見なかったのか?」

傘を持っていない俺を見て呆れたように笑う父さんに、俺も少しだけ照れ隠しに笑った。

家へ着くと、母さんが俺のために沢山の料理を作っていて。

「おかえり!雨に打たれなかった?」

タオルを持って玄関先まで来た母さんは、俺と父さんを見比べて濡れていないことを確認すると、早く早くと家の中へ招き入れてくれた。

実家で過ごす時間は、ほんの1ヶ月ちょっと前までは当たり前の時間だったのに。

大学へ入学して一人暮らしを始めてから初めての帰省で、少しだけ懐かしく感じてしまう。

家の中は一人っ子の俺が居なくなったことで何か変わったかと思っていたけど、どこも変わること無くて。

当たり前と言えば当たり前なんだろうけど、俺が使っていた食器もすべてそのままでちょっとだけうれしかった。

食事をしながら、学校のこととか最近初め他バイトのことなどを話し、楽しい時間を過ごした。

「勉強とバイトで、食事は大丈夫?」

「夜はバイト先の賄いが出るから、助かってるよ」

野菜をたっぷり使った賄い料理は、今の俺の大切な栄養源だと思っている。

「そう?たまには家で料理くらいしなきゃ」

「はは。朝ご飯くらいは炊いてるよ」

実家にいたときは毎朝母さんの作ってくれるご飯をお腹いっぱい食べてから学校へ行っていた。

一人暮らしを始めた今も、何もなくてもお米だけは毎朝炊いて食べるようにしている。
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