雨に流れる
行きと同じ景色なはずなのに、電車に揺られながら流れていく景色を見ていてなんだか寂しく感じてしまう。

2時間ほどで最寄り駅に着くころ、雨はすっかりあがっていた。

棚に上げてあった荷物を取り、降りる準備をしているとバイブにしていた携帯が震えた。

いつまでも震える携帯に、着信だと気が付き慌てて携帯を取り出すと、見たことのない番号で。

ちょうど駅に着いたので電車を降りてホームで電話に出た。

『戸ノ先さんの携帯ですか？こちら大学病院ですが』

「え？病院？」

その後のことはよく覚えていなくて、慌てて駅で捕まえたタクシーに乗り、電車で揺られた距離を再び実家近くの病院へ向かった。

高速道路を使うと1時間ほどで着く実家。

病院へ着き、詰所で名前を言うと初めて行く場所へと案内された。

「こちらです。ご確認をお願いします」

目の前には、白い布で覆われた2人の大人。

3時間前に笑顔で手を振っていた、父さんと母さん。

何が起きたのかよくわからなくて、震える手でそっと布を外すと、そこには傷だらけの顔で眠っている二人がいた。
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