恋よりも、


保健室を出て廊下を歩いていると、佑美がニヤニヤと薄気味悪い視線を送ってきた。

「……なに?」

佑美はさり気なく弥代に目配せする。弥代も何やら楽しそうに微笑んでいる。……非常に居心地が悪い。

「なに、って香月ー。相変わらず加賀先生とは夫婦なのねー」

と、佑美。

「は?」

「だって、ねえ、弥代?」

「ふふ、そうね。だって香月と加賀先生はすごく仲が良いもの」

弥代までそんな事を言う。

「……なんでみんな私と加賀先生が仲良いなんて言うんだろ」

確かに、ちょっと問題はあるけれど、加賀先生の事は信頼している。先生も信頼してない人間に仕事を手伝わせはしないだろう。けど、それは仲が良いのとは違う気がする。周りからは、仲が良さそうに映るのだろうか。

首を捻る私に、佑美と弥代は何も言わず微笑んでいた。



結果から言うと、サッカーは準優勝だった。
準決勝は相手が二年生という事もあり、わりと余裕で勝てたのだが、次の決勝戦、惜しくも二点差で負けてしまった。優勝は逃したけれど、それでもよくやった、準優勝なら充分だとみんなで喜んだ。


試合が終わると私は真っ先に保健室へ戻った。けれど私が抜けている間に当番の子が来てくれて、特に問題はないようだった。その後数人が保健室を訪れたけれど、充分手が足りる範囲内で、忙しさと対面する事はなかった。ちなみに、本日打撲や骨折等の重傷を負った生徒はいなかったとの事である。


そんなこんなで、球技会一日目は幕を下ろしたのだった。


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