恋よりも、
『“ごめんなさい”か……。俺、自惚れてたわけじゃないけど、もしかしたら期待してもいいのかなって思ってた。原田が返事をくれないのは、ちょっとでも迷ってくれてんのかなって。俺と付き合うって事も考えてくれてんのかなって。でも……違ったんだね』
『――っ』
何も言う事が出来なかった。返事を先延ばしにすれば高瀬くんに期待を持たせてしまうと分かっていたのに、ぐずついていたのは私だ。
言葉に詰まる私を見て、高瀬くんは自嘲的に笑った。
『原田ってさ、結構残酷だよな』
その言葉が、胸に突き刺さる。
『俺が告白してからもさ、話し掛けたらいつも通り一生懸命話してくれたし、話してる最中も笑ってたし。今日のバスケだって見に来てくれただろ? 誘った時は委員会あるって渋ってたのに、いざ試合が始まるとちゃんと来てくれて。……そんなの、普通期待するじゃんよ』
責められて、いる。
けどどうして高瀬くんに責められているのか、頭がついて行かない。
でも、だって、話し掛けられて適当に答えるのは、それは相手に失礼だし、そうならないためにはちゃんと答えるしかない。話をしていれば当然笑う事だってある。バスケの応援だって、自分のクラスの試合を見に行くのはおかしな事ではないはずで。
……浮かぶのは、醜い言い訳ばかりだった。
『勝手に期待した俺も悪いけどさ、原田も、もう少しそこらへん、考えた方がいいと思うよ』
『っごめん、なさい……』
『……もう、いいから。これからは、今まで通りクラスメイトしよ』
『……うん』
『……じゃ、俺先に体育館戻るね。原田も片付けさぼるなよ』
それから、片付けをしても表彰式で三位の表彰をされても、胸の痛みが引く事はなかった。
今まで自分が信念としていた事が、一瞬で崩れた気がした。
私は人としての誠意を持って高瀬くんに接していたのに、結果的に高瀬くんを傷付ける事になってしまった。分からなかったと、知らなかったと、それで済む話ではないのだろう。自身の行動で彼を傷付けた事に変わりはないのだから。