天才少女の育て方
そして、それから数日間は何もなかった。

「雫、痩せてきたね」
「そうかな?」

そういって、自分の腕を見た。
そろそろ、泊まる場所を探そうか・・・・。

「ヨク。今日までここで過そう。明日の朝から泊まる場所を見つけるよ」

しかし、事件はその日に起こった。

いつものように、ヨクが雫の隣で眠りにつく。

(公園生活も、今日で終わり・・・。)

そう思い、一息ついたその瞬間、雫は何者かの気配を敏感に感じ取った。

時計に目をやると、今は午後10時。こんな時間に誰が来るのだろう。

雫は、リュックサックを近くの茂みに隠した。問題は、ヨクだ。下手に顔を見せたらヨクまで仲間と見られ、狙われるだろう。

起こさないように、ズルズルとヨクをリュックサックの近くに移動させた。

ふいに、足音が聞こえた。近くにいるようだ。

すると、
「そこで何をしている?」

低い、男の声が聞こえた。

雫は思わず身震いした。


「あっ・・・あたしは・・・・」そこまで言葉に出した途端、ハッと息をのんだ
自分は今、男装をしていることをすっかり忘れていた。

でも、男には聞こえていなかったらしく、雫は改めて言い直した。

「ぼ・・・ぼく、ちょっとお母さんと喧嘩しちゃって・・・家から出て行ったんです」
「じゃ、そいつは誰だ?」

気が付くと、男は雫の間横に立っていた。
心臓が大きな音で鳴り響く。

多分"そいつ"とは、ヨクのことだろう。

雫は必死で冷静さを保った。

「え・・・えぇっと、この子は友達。偶然同じ時に喧嘩しちゃって、それなら2人で、ここで暮らそうってなって・・・・・。」

「・・・ふん。よく分かった。」

雫は、事前に手に持っていた、暗闇でもよく見える特殊なメガネをかけた。
そして、真横に立っている男の顔を見た。

しかし、帽子をかぶっているようで、よく見えない。

「おい。お前に聞きたいことがある」

「は・・・・・はい・・・・」

「俺は今、池神 雫というヤツを探している。」

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