暗黒詩集 アディエール
Mの残り香




まだ?
あったんだ これ

縛られて泣いて悶える癖が

優しくされたいのに
噛まれなきゃ疼かない
呪われた身体

もう終わらせて
罪と罰
後ろまでくまなく開かれて

血生臭い
この部屋も
ベッドも

あの日
残酷な盗撮と淫湿な脅迫に
切り刻まれた
ごめんなさい
ごめんなさい
許して
許してと
泣きながら喉から血を吐いて
怯えて何日も震えながら過ごした

発狂する寸前
恐怖を両脚の間でねじ曲げて
切り裂かれた心を
硬い悪魔に売り
無垢な信頼と引き替えに
被虐の快楽を買った

犯されて
はめられて
剥かれて
曝されて
それでも

心は死んで
被虐は生きる

そうでなければ
地獄

戦慄と恐慌
怯えと絶望

充分だ
あの時悪魔にまで
同情された!

残り香…

まだ大人になる前に
死んだ少女の心
腐臭

どんな酷い被虐も
エクスタシーに書き換えられるの
こんなに開いて

まだ死んだままで







 

< 2 / 10 >

この作品をシェア

pagetop