暗黒詩集 アディエール
世界はグランギニョール
ポルノ映画の監督に
少女はこう言った
「お人形さんのように犯されるの
関節が変な角度でねじあげられて
ただされるがままに」
映画監督は尋ねる
「君には意志は無いの?」
少女は答える
「意志?…冗談だろう?
この世はグランギニョールだ
お前も操られてるだけだ」
映画監督は詰問する
「…いいや!言いなさい!
主体性のない女なんて
何の魅力がある?
犯して!犯して!と願いなさい!」
少女は微笑んだ
「見えない悪魔に
手を牽かれて此処に来たわ
私は愛欲の器
ただの容れ物がどれだけいやらしいか
あなたは知らないの?」
悪魔がくれた器
意志?
みな操られているだけなのに
ヒューマニズムをかざして
彼は少女に迫る
僕が抱けば君は呪縛から解放される
だって欲しいものはないわ
風に背中をなでられて
イってしまうのよ
どんなにじらされても
ただ狂うだけ
完全に開いてしまったの
なぜかは知らないわ
でもただひとつ言えることは
なにひとつ
思い通りになんかならないの
そう
この世界ではな…!
少女は完璧な器
愛撫の刺激に対する完璧な反応
全身が性器?
触れただけで震え
くちづければ
狂ったように悶え苦しむ
彼はおののく
自分の体液を枯らすまで
とり憑かれたように
…やめられない…!
意志?
意志の中に
この快楽はない
ただフィルムが
ひとりでにまわるだけ
監督
ポルノグラフィティは
あなたの意志で
創られるんじゃないのよ
此処で溺れ死ぬんだ!