おとぎの姫君
(聞こえなかったの?!)
(何が?空耳じゃない?)
そう言うと彩香はすぐにまた本を漁り始めた
空耳…だったのかな…?
『空耳なんかじゃない。そうか、お前には届いたか…私の声が』
え?!
勢い良く振り返る私
左右を伺っても誰もいない
『無駄だ、探しても見つからない…私の姿はまだお前には見えない』
彩香が不審そうに私を見てきたのを視界の端の方でとらえた
彩香には、聞こえない?
『お前にこちらの世界に入れる権利をやろう。なんせ、久しぶりの来客だ。私は嬉しいぞ』
声の主が言い終わったと同時に
本棚のある一冊の本が光り出した
『開け…お前の為の入り口だ』
意識が遠のいていく…
知らないうちに手を伸ばし、その本を本棚から抜き取っていた
そして…
静かに開いた
同時に私の意識は一気に飛んだ
曖昧な記憶の中に彩香の私を呼ぶ声が聞こえていた
私、どうなっちゃうんだろ?
そんな不安が頭の中を過ぎった