アナタハシニマシタ

サインした契約書を優次に手渡し､彼がチェックしていく｡



｢名前は変えるぞ｡普通の生活に戻れるまでは別の名前にするんだ｣



｢別に良いんじゃ無いですか？その方が向こうからやってくるし｣



優次は溜め息をついた｡



｢お前が良いなら構わないけど､『キラー』は失敗を許さない｡『似ている人で名前まで一緒の奴が生きている｡』なんて分かった日には今度はバラバラ遺体になるか､ミンチになるぜ？｣



修はゾッとした｡ただでさえ一度死にかけている｡優次に助けてもらわなければ死んでいただろう｡一度ならず二度､そして今度は今よりもむごい殺し方になるなら名前を変える位容易い事だ｡



｢お前の新しい名前は…｣



優次は少し迷って本棚に並んである文庫本の一冊を手に取りパラパラとめくって､



｢お前の新しい名前は遠野勇(とおのいさむ)だ！｣



苗字と名前を一文字変えただけの簡単すぎる改名だ｡その方が修が名乗る時も間違えずに済むという計らいなのか｡



かくして修の名前は遠野勇に変わることになった｡