アナタハシニマシタ
「おかえり、ずいぶん早かったけど成功したのか?」



事務所に戻ると優次がのんびりとテレビを見ていた。



修はテーブルの上に謝礼の入った紙袋を置く。それを見て優次はにやりと笑った。



「成功か・・・。幸先は良さそうだな。この調子で頼むよ」



そう言って謝礼を懐に入れて代わりに一台の携帯電話を修に見せる。機種はそこそこ新しいもので、修が前もっていた物より新しい。



「お前の携帯だ。これで連絡を取り合う。これから何かと使うかもしれない。このご時世に携帯を持っていないで仕事はできないしな」



優次は携帯セット一式を修に手渡す。そして注意を受ける。



「登録名は遠野勇。くれぐれも前の名前――東野修は使うなよ。どこで漏れるか分からないからな。――後、お前の部屋はこっちを使え。一応掃除はしてある。家具の位置が気に入らなかったら適当に変えてもいいぞ」



そして左のドアを指差した。



修はドアを開ける。部屋は六畳半ほどの洋室。ベッドに本棚と机。そしてクローゼットの最低限の家具が揃った部屋だった。



「気に入ったかい?まあ、住めば都だ。これからいつまで続くかは分からないけど、よろしくやっていこうや」



相変わらずのやる気の感じられない声で話してくる。探偵事務所をやっているのでそこそこのレベルではあるのだが、どれほどのものなのかまだ疑わしいところだ。もしかしたらそれ自体が嘘なのかもしれない。とも思える。



修は部屋に入り、携帯の使い方を実際に使いながら覚える。その途中で沙良の連絡先を登録してすぐにメールを送った。二、三分後に返事が来た。



『今日はありがとう。次があったらよろしくね!』という簡単なものだった。







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