アナタハシニマシタ
果たして彼女は何をしたのだろうか?殺されるだけの悪事を働いていたのだろうか。




「殺害方法はガソリンを使った焼死だそうです」




「よし、この周辺にポリタンクを持った人間を徹底的に連れて――」




「ちょっと待った」




木村の声を遮ったのは、他の誰でもない。優次だ。




彼は顎に手を置いて考えながら話始める。




「ガソリンを使うからってポリタンクを使うなんて安直過ぎないか?」




木村はムッとした顔で優次の話を聞いている。




「まだストーブを使う時期でもない時にポリタンクを持って歩く奴がいるか?そんないかにも『疑ってくれ』という奴が堂々と殺しに来るとは考えにくいね。――もちろん、それが『キラー』なら別だかな」



優次の口から『キラー』の単語が出てきた。修を殺そうとした奴の名前だ。修は自然と拳を作って握り締める。



「でも今回は、名前が『キラー』じゃないから違うだろうな。そういう輩は注目してほしいが為に名前を別々にする。成功すれば一気に注目度が増すからな」




「で、ではどのように犯人は持ってくると?」




質問した警官を木村が睨む。それに気付いた警官は頭を垂れた。




「それは分からない…。手に持ってても決して不自然じゃないものだ。ペットボトルや空き缶…その他諸々だな。液体だから手では持ってこれないしな」



通行人が警官と優次のやり取りを見ている。傍から見ればそれは交通違反で取り調べ中のようにも見える。手には風船を持って優次を見てくすくすと笑っている。




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