アナタハシニマシタ
結論が出ないまま時間だけが過ぎていく。残り二五分を切ったところで木村が部下に命令する。



「とにかく、挙動のおかしいものがいたら持ち物を調べさせろ!抵抗したらすぐに私を呼ぶんだ!行け!」



木村の一声で警官たちが一斉に散って行った。優次の取り調べではないのか。と明らかに落胆した様子で離れていく通行人。人通りが少ないはずなのだが少し多いように見える。



「今日、人通り多くないですか?なんかあるんですか?」



修が木村に質問すると、代わりに優次が答えてくれた。



「今日はこの近くに大型ショッピングモールがオープンしたんだよ」



そして優次が指差す。そこには子供連れの親子が黒い風船を持っていた。スティック付きなので滅多なことでは手から離れない工夫がされている。



「あの黒い風船は、ショッピングモールの先着イベントだろう。真っ黒な風船って結構珍しいよな・・・。――真っ黒か・・・」



何かに気づいた優次はすぐに木村に命令する。



「風船だ・・・。木村さん!」



木村は顔をしかめる。優次が何を言っているのか分からなかった。もちろん修もそうだった。



「手に黒い風船を持ったやつを徹底的に呼び止めろ!そして風船を飛ばせ!飛ばなかった風船を持った奴が犯人だ!」



「ど、どういうことですか?なんで風船?」



「簡単だ。風船の中にガソリンを入れるんだよ。外見は黒だから中に何が入っていても分からない!奴はそこに目を付けた。そしてガソリンは気化するのが早い。半分ほど入れて膨らませて、ターゲットが近づいた瞬間に風船を割って火をつける!これで繋がるだろ!?」



それを聞いた木村は顔色を青くさせて、部下に連絡する。



「全員!黒の風船を持った奴を止めろ!そしてその場で飛ばせ!浮かばず落ちた風船を持っているのが犯人だ!時間がない!子供が泣こうがどうしようが構わない!人命を優先せよ!」
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