アナタハシニマシタ
木村が通信を切ると同時に彼も黒の風船を回収しに走り始める。



「俺らも手伝おう。こっからは時間との勝負だ」



修は頷いてバラバラになって浮かばない風船を探し始める。



目の前で風船を手放すことについてはかなり手荒いことではあるが、こちらは事件。重々了承してもらって風船を上へと飛ばす。周りには空き地が多いこともあって黒の風船が次々と空に向かって飛んでいく。



残り十分を切った。しかし、浮かばない風船を持った人は見つからない。修は風船を飛ばされて泣いている子供をあやしている。手に持っているものは全て宝物にしたがる子供は中々泣きやむ気がない。仕方なく修はポケットに入っているキシリトールガムを一つ渡してどうにか泣きやんでくれた。



これで二十人目。しかし、まったく当たりを引かない。優次からの連絡がないところを見ると他でも当たりはいないということだ。



子供の後ろを歩く男がいた。少し早足で立ち去ろうといていた。黒のダウンジャケットに黒のパンツ。手にはやはり黒い風船を持っていた。



少し不審に感じた修は男を追いかける。何もないこの場所で急な方向転換は完全に彼にとってよくないことが目の前であったからだろう。



男は修が追ってくるのを見て走り出した。完全に何かある。そう思った修は優次に連絡をする。幸い普通に追いかければ追いつける。



「優次さん!捜査中に逃げる男がいます!場所は――うわっ!」



今度は男がこちらに向かって走ってきてタックルをかます。修は間一髪避ける代わりに体勢を崩しす。これでかなり差が出来てしまった。



『勇!場所はどこにいる!?』



「えっと裏です!車を止めた場所から家を一軒挟んだ場所です!」



電話が切れた。どうやら分かってくれたようだ。すぐに男の足が止まる。前には優次の姿が。そして男の後ろに修が立つ。これで逃げ場がなくなった。
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