アナタハシニマシタ
それを見計らっていたかのように木村が、確保。と一言だけ。それと同時に後ろで控えていた警官たちが一斉に気を失っている男の身柄を拘束。パトカーの中に入れた。



「ご協力感謝します。報酬の方は後日振り込まれます。後はいつものように…」



「分かってるよ。他言無用だろ。何回も組んでるんだから同じこと言わなくてもいいんじゃねえの?これだから頭の固いお役所さんは…」



「これ以上変なことを言うと侮辱罪で報酬はさっ引くからな」



優次は大きなため息をついて、自分の車に乗った。それを見て修も助手席に座る。すぐにエンジンをふかして、



「そんじゃ!俺たちはこれでお暇させてもらうぜ。残りの処理は頼んだぜ」



そう言って車を発進させた。警官たちはピシッとした姿勢で敬礼をしたが、木村はどういうわけか敬礼はせずただ優次たちの車を見ていた。



「結局のところ、優次さんは木村さんとどういう関係なんですか?」



「あいつとは大学の仲間だ。そんで同じ警察の同僚やって、今はあいつは立派な刑事。俺はしがない探偵気どり…。ああ、無常だねえ」



――だから優次さんにはああいう態度だったんだ。



「でもどうして警察辞めちゃったんですか?優次さんの格闘能力なら特殊機動隊やSATでも活躍できるはずですが…」



「勇。人には他人に知られたくない過去があるもんだ。だから…な?」



優次は恐ろしく落ち着いた声で修に話す。どうやら相当言いにくい出来事があったようだ。



「道は違えど、目的は一緒。俺はネットの殺人予告を未然に防ぐ仕事をしているんだ。そして木村も同じ仕事をしている。いつもは一人、時には木村の協力を貰って事件を防ぐ。結局抑えられるのは氷山の一角だが、それでもやらないよりはよっぽどマシだ」








< 31 / 46 >

この作品をシェア

pagetop