アナタハシニマシタ
増え続けるネットの書き込みによる殺害予告。一々全部真に受けるのは愚かではあると思いながら、人を殺すと書かれた以上それを無視するわけにはいかない。だからこそ木村という刑事がいて、朱谷優次という探偵がいる。一歩一歩は恐ろしく小さいがそれでもゼロよりははるかにマシ。だから二人は見えない悪と日夜闘っている。



今までは優次のことを疑っていた修ではあったが、少し彼に対する見る目が変わった。彼も警察に所属していた時代と変わらない情熱がある。使命がある。修にはそう見て取れた。



自分を殺そうとした『キラー』は今もどこかで人を殺す計画を画策中なのだろうか。その後ろ姿は今は全く見えないが、いつか奴の背中を見つける機会が来る。



車はゆっくりと確実に事務所に戻る。明日になったら新聞に報道されることになるだろう。有能な警察の裏側には有能な探偵の活躍があったことを。探偵までは書かれることはないが、事件の抑止力に繋がることを祈るだけだ。



悪は見えないところからゆっくり、確実に現れる。そして何もしていない人間を食いものにしていく、真面目な人間が馬鹿をみる世界になってしまった。



せめて自分の周りだけはそうなってほしくない。解釈は違うかもしれないが、連いてきてよかったと修は思った。



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