アナタハシニマシタ
ため息をついてうつむいている修に優次が追い打ちをかける。渡してきたのは一枚のUSBメモリ。どことなく嫌な予感がする。



「ほら。これが木村からの資料。それに全部入っているから目を通しておくといいぞ」



パソコンに挿して容量を確認する。2ギガ入る所いほぼ満杯入っている。ほとんどが画像とワードで書かれている文章だ。それが二百近くある。気が遠くなりそうな数だ。



「よろしくな」



そう言って優次は修の肩をぽんと叩いた。その時の彼の表情は子供のように無邪気な笑顔だった。どうやらこちらが助けを求めるまで助ける気はないらしい。仕方がないので自分ひとりで行ける所まで行こうと一番上の画像と報告書を見はじめることにする。



小腹がすいてきたので小休憩。気がつけばもう正午を回っていた。ここまでにまだ四分の一にも満たない量しか消化しきれていない。優次が邪魔をしてこなかった分ずいぶん早いペースで読めたと思う。これが普通の人にとって早いのかは分からない。



テーブルにはバターロールを半分に割ってウィンナーを挟んだだけの簡単なホットドッグを食べながら読み込みを再開する。



大体が読み終わる頃には日もどっぷりと暮れパソコンの明かりが唯一の光源になっていた。どうやら優次は外出したらしい。気がついた修はすぐに照明をつけて部屋を明るくする。そしてまた読み込むためパソコンとにらめっこを始める。




「ただいまー。勇は資料読み終わったかな?――ありゃ…」



ルンルン気分で事務所に戻るとパソコンの前で不自由な体制で眠ってしまっている修の姿があった。最後の書類の部分までカーソルは進んであり、ノートに要点がおさめられてあった。B5ノート六ページ分にまとめられてあった。優次はそれをパラパラめくっていき、



「中々いい感じにまとまってあるねえ。さすが大学生だね」



修の部屋から毛布を取って修にかけてやる。一応すぐに起動できるようにスリープモードにパソコンを切り換えて、リビングの電気を落とした。
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