アナタハシニマシタ
考える線は誘拐か家出。この話を聞く限りでは余計この線引きがに難しい。今の段階では家出よりは誘拐と考える方がしっくりくる。行動派とは言い難い。何かが嫌になって出ていくとも考えられない。そこまでの行動ができるならもう少し活発な印象があってもいいのだが。



「…分かりました。明日香さんの同学年の生徒にお話を伺ってもよろしいですか?」



「ええ。構いませんよ」



岸野明日香は16歳。高校二年。教室は二階。ちょうど帰りのホームルームが終わったようで次々と生徒が教室から出てくる。皆が修のことを見てくるが部活動に忙しいので関係ないように素通りしていく。



修は二年六組の前で歩みを止めた。岸野明日香が所属しているクラスだ。六組と七組は理系クラスのようだ。こちらはまだホームルーム中だったがすぐに終わった。次々と生徒が出てくるので修も教室に入る。



そこで聞いた情報もあまり――校長の話と同じようなものが多かった――収穫がなかった。収穫があったと言えば。彼女は自分のことを『あす』と呼ばせているくらいか。そしてもう一つ。



「あれ?勇さんじゃないですか!」



後ろから声がしたので振り返ると、そこにいたのは制服に身を包んだ、川崎沙良だった。この前とはずいぶん雰囲気が違う。周りは彼女と修がどういう関係なのかとても興味があるらしい。



「沙良ちゃんはこの学校だったんだ。知らなかったよ」



「今日はどうしたの?――あっ、お仕事か…」



「うん。今日は一応警察官として。だから沙良ちゃんは探偵なんて言葉口に出さないでね」



一応、念のため注意しておく。わざわざ木村が偽造までして作ってくれたものだ。その行為を無駄にしたくない。



「今日は岸野明日香さんについて調べに来たんだけど、何か知ってる情報ある?」




「岸野さんだよね…。すごく頭が良くて、お金持ちでしょ。後は…」



沙良は何かが思い出せなくて悩んでいる。どうやら彼女もそこまで彼女と仲が良くないようだ。そしてようやく思い出したようで、



「そう!そういえばご両親とはあまりうまくやっていないみたい!」



< 38 / 46 >

この作品をシェア

pagetop