アナタハシニマシタ
優次は探りを入れるような目で修を見る。どうやら彼はペットを探すレベルの探偵ではないことを修は雰囲気で感じた。しかし修は答えなかった。しばらく経っても答えようとしない修を見て、優次は大きくため息をついた。



「だんまりか・・・。――まあいいか。人には知られたくない過去はあるもんなあ・・・。」



「今何日ですか?」



「十一月の二四日だ。お前はかれこれ四日は寝ていたんだ。そして損傷した器官・骨はもうほとんど回復している。もう普通の生活に戻っても大丈夫だ。――戻れるならな」



優次の最後の言葉が気になった。修は不運な事故に遭って九死に一生を得た。そして何事もなく復活。そしてまた家に戻り、学校に行けばいい。何も困難や障害などない。でも彼の一言はとても重く聞こえた。



「どういう意味ですか?」



「これを見ればわかる」



修は投げられたものを受け取る。三日前の朝刊だ。一面には最近の政治の矛盾について書かれ、総理大臣の写真が載っていた。



「二八面。地方版の隅っこをよく見てみろ」



言われたとおりに隅を注意して探す。そこには修が遭った交通事故について載ってあった。



「ひき逃げ事故が発生。乗用車が猛スピードで交差点に進入。横断中の東野修二〇歳をはねて逃走。行方は今のところつかめていない。東野さんは・・・即死、嘘だろ!?俺はこうして生きてるのに!」



待っていたかのように優次はテレビのリモコンを持っている。すぐに電源をつける。



『二十日に起きたひき逃げ事故は今のところ明確な証拠が見つからないまま四日が経ちました。東野修さんのご家族は、いち早く犯人を捕まえて欲しい。と願っていました。ご家族は昨日、昨日の夕方ご遺体と対面し東野さん本人に間違いないと漏らし・・・』



そこでたまらず修がテレビの電源を切った。



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