ファーストキスは蜜の味。

「お客様、当店ははじめてでしょうか?」

わざとらしく問いかける営業トーク。

あたしは思わずふきだした。



「はじめてだから、とびっきり可愛くしてくださいね」

「もとが可愛いので、これ以上どうすればイイんでしょうか」

「あはは、さっすがカリスマ美容師!!
――…女性客のハートをわし掴みだねっ」


陽クンとは歳の差があるせいか、さほど喧嘩もすることなく育った。

成人してからも、こうやって面倒見よくかまってくれるからダイスキ。


陽クンは簡単に髪を濡らすと、ハサミで髪を切り始めた。

ハサミのこすれる音が心地よく聴こえる。

「なぁ、ウタ」

「んー?」

「恭一となんかあったか?」

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