ファーストキスは蜜の味。
あたしは思わず陽クンをふり返った。
「おっと、イキナリふり返ったら危ねぇぞ」
「ごめ…っ」
まえに向きなおし、鏡越しに陽クンをみた。
「なんで恭兄だと思ったの?」
「さぁ、なんででしょう?」
目線をあわせることなく、美容院でするようにカットに集中しながら会話をする。
だいぶ梳いているみたいで、切った毛の落ちる音がパサリと響く。
「恭兄って昔からモテてたよね」
「そういえば彼女欠かしたことなかったなぁ。
高校んトキに引っ越したから、それ以降はわかんないけど」
「だよねぇ」
あのころから恭兄はよく女の人と一緒にいたもん。
いまさらなんだよね。