ファーストキスは蜜の味。
黒い黒板には、“羽深 恭一”と大きく書かれている。
ごていねいにひらがなで“はぶか きょういち”と読み仮名までふって……
「入院中の木村先生の代わりに今日からお世話になります、羽深と申します。
――…あれ、お世話します、か?」
たどたどしい様子がうけたのか、どっと笑いを誘った。
「教師だろー、しっかりしろぉ」
「先生、本当に教免持ってんのかぁ?」
頼りない印象をうける、羽深恭一という男
――…そう。
羽深という男は、今日からあたしの高校に臨時講師としてきた、センセイだ。