ファーストキスは蜜の味。
声震えてないよね。
暗闇に慣れてきたおかげか、うっすらと車内の形がみえてくる。
恭兄のほうをみると、自然と視線が絡みあう。
ゆっくりと近づく瞳に、あたしはそらすことができなかった。
音をたてて重なる唇。
嬉しいはずのキスが、いまだけは悲しく感じた。
互いをむさぼるように触れた唇。
ガタンッと背もたれが倒され、恭兄はおおいかぶさるようにあたしの上に乗る。
唇が離されることはない。
あたしをとおして、誰と重ねてるの?
忘れられない人……
――…彼女……?