ファーストキスは蜜の味。
「泣いてんのか」
「泣いてない」
「なにを怒ってんだ」
「怒ってない」
「じゃあなんだ」
なんだ?
――…なに、なんてわかんないよ。
自分の気持ちをどうしたらいいのかわかんないもん。
あふれそうなのに、うけとめてもらえない気持ち。
「ねぇ、恭兄」
「なんだ」
低い声が、よけいに胸をしめつけた。
「あたし、恭兄が大好きだよ」
あたしはそういうと、逃げるように自分の家へ帰った。