青い空、誓った想い
「じゃあ『愛の悲しみ』が聴きたい」


そう言った先生の表情は明るかったのに、私には先生のその表情とは正反対の心が見えた気がした。


「先生からクラシックの曲がリクエストされるなんて思いませんでした」

私は何も気が付かないふりをして、そんな言葉を返した。 



「ダメか?それとも弾けないか?」

挑発するかのように言う先生。


私は笑ってしまった。


「私を挑発してるんですか?」


「そうかもな」


「残念ですが、挑発しても意味ないですよ。明日、楽しみにしていて下さい」


「急いで帰って練習しといてくれよ」


いつもクールな先生から出た子供みたいなその一言に呆れながら

「分かりました」

と笑いながら答えて、部屋を後にした。
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