春夏秋冬




「さわんじゃねーよ、イキがり」




こうやって、愛想悪くすれば人も寄ってこないと思っていた。


でも、こいつだけはちがった。



「イキがりって…」



男は笑った。


何の偽りもなくて、澄んだ目してて。


あぁ、こいつは今が好きなんだな…。




「俺は、田沼春哉。夏蝶の総長だよ」




なに、こいつのノリは。


明らかに温度差。


あたしは去ろうとするが、手を掴まれたままだ。


「…手」


あたしは小さく呟くと離してくれた。


あたしは足を前へ出す。





「また、逃げるんだ?」





男はそう言った。


あたしはまた足を前へと進める。


だから、なんだよ。


今まで、孤独だった。


むしろ好んでいた。





< 5 / 166 >

この作品をシェア

pagetop