ティードリオス ~わが君にこの愛を~
「第九期ヴィーセンタ……名前もまだ決まっていない」
 ミルドレインが口を開く。
「ティオが中心になって開発していたものだ。兄上は知らない。陛下もな」

 伏せておいて良かったと、ぽつりと洩らす。

 スペックの項には、とんでもない数値が書いてある。これが実用化されているとすれば――。

「これを使えば、この騒ぎも収まる。
 だが――搭乗者がいない」
「まさか……自分を?」

「無理にとは言わない」
 やっと洩らした言葉に、ティードリオスが答えた。
「開発した本人が言うのもなんだが……かなり無茶をした。操作に搭乗者の神経伝達を反映させるため、障害が出る可能性もある」

「それに……これを持ち出さずとも、おそらく勝てる」
 ティードリオスの言葉を引き継いで、ミルドレインが言う。
「不安が大きいなら、今のことを忘れ――」

「いえ、志願いたします」
 ファイルを閉じ、彼女はきっぱりと言った。

「――そうか。
 では、頼む。洸流・ホーレスト子爵」
「イレ・ルーヴュ・テオ」
 白衣の片方が、ぱちぱちと手を叩いた。


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