ティードリオス ~わが君にこの愛を~

 操縦桿は、ない。
 思考伝達の為に頭部につけたチップが、代わりとなる。

『一応、ディーンハルトとラインハルトも出るが……機体に王家の紋章がある為、私や姉上が乗っていると思われるかもしれない』

 コックピットの中に座り、ティードリオスの声を聞く。最優先で回線が開いていた。

『紋章を塗りつぶすという案もあったんだが……反乱者やテロリストの行動だと反論されてな。勘弁してくれ。

 ……まったく、身内の始末を部下に任せなければならんとは……情けない。これだから王家というものは……』

 自嘲するような言い方に、洸流は何か言いかけたが、止めた。

『昨日の演習の通り、基本的に神聖言語で思考してくれ。共通語でもいいが……反応が遅い。それから……』
 ティードリオスは、戸惑いがちに、
『あんな兄でも、もう一度会って話がしたい。……できれば……』

「イレ・ルーヴュ・テオ」

 洸流の言葉に、彼は微笑み、
『ティーヴ・オレーン』
 ――感謝する。ありがとう。または、――愛を込めて。そういう意味の神聖言語だった。



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